上腕二頭筋・上腕三頭筋を効果的にトレーニングができるストレッチ種目やコントラクト種目とは?POFトレーニング法について!
こんにちは、カリスフィットトレーナーの山下 綾介です。
前々回のコラムでは二の腕の上腕三頭筋のトレーニング
前回のコラムでは上腕二頭筋のトレーニング
これらの投稿で、上腕位のトレーニングについてご紹介しましたが、複数あるトレーニングの種目で、
今回は「POFトレーニング」という方法をもとにトレーニングの種目わけや、その効果の違いをお伝えしていきます。
内容としては、トレーニングに慣れフォームを習得している「中級者以上向け」の方にオススメです。
POFトレーニングとは?
POFとは「Position of Flexion」そのまま訳すと屈曲の位置という意味合いになってきますが、これはトレーニング種目において負荷がかかる位置のことをさしています。
POFトレーニングの考え方では、そのトレーニングを行なうときに、動作のスタートポジションからフィニッシュポジションの間でどこの位置で一番負荷がかかるかによって種目の分別がされます。
また、それぞれに含まれる種目を組み合わせることで、筋肉に対して満遍なく負荷をかけることにより効果的であるというのがこのトレーニング方法の考え方です。
それでは、その分け方をご紹介します。
<種目の分け方>
◆ミッドレンジ種目
◆ストレッチ種目
◆コントラクト種目
この3種類に分かれます。
<種目の特徴>
◆ミッドレンジ種目
動作の中で、中間位置のところで最も負荷がかかる種目です。
ミッドレンジ種目はコンパウンド種目(複数の関節を使う種目)が多いので、比較的高重量で行ないやすい種目になります。
◆ストレッチ種目
動作の中で筋肉が伸びている状態のところで最も負荷がかかる種目です。
ストレッチ種目は筋肉を伸ばしながら負荷をかけるため、筋肉に細かな損傷を与えやすく、筋肥大に効果的です。
◆コントラクト種目
動産の中で筋肉が収縮した位置で最も負荷がかかる種目です。
コントラクト種目は筋肉の収縮を中心に行なうので、筋内圧(筋肉の収縮による内圧)によってポンプのような作用が働き、血流を促します。
俗に言う「パンプアップ」を狙うことができる種目です。
<種目の重量・回数設定>
POFトレーニングでは、「ミッドレンジ種目」「ストレッチ種目」「コントラクト種目」それぞれの特徴があり、得られやすい効果も変わります。
そのため、回数設定もそれを活かしてあげるようにすると良いでしょう。
ではその特徴に基づいた回数を説明します!
◆ミッドレンジ種目
ミッドレンジ種目は多関節を活かした高重量トレーニングでベースの「筋力アップ」を狙いましょう!
筋力アップの場合は多くても6回くらいがギリギリできるような重量でトレーニングしてみましょう。
◆ストレッチ種目
ストレッチ種目は筋肉の損傷を与えることで「筋肉量アップ」できるトレーニング重量が向いています。
回数として6~12回で収まるように重量設定をしてみてください!
◆コントラクト種目
コントラクト種目ではパンプアップを目的にしていくので、ある程度筋肉を何回も動かすことが望ましいです。
なのでこの種別に含まれるトレーニングは15~20回くらいの多い回数でのトレーニングと相性が良いですよ!
POFトレーニングの取り入れ方
<導入するためのトレーニングレベル>
冒頭でも案内しましたが、中級者以上にオススメする理由のひとつは、ミッドレンジ種目ではとくに高重量のトレーニングになります。
そのため最低限正しいフォームで安全に行なうことができなければ、危険を伴いケガのリスクもあることになります。
初心者の方は上記と内容は異なるので最大限の効果は発揮できないかもしれませんが、
種目だけ「ミッドレンジ種目」「ストレッチ種目」「コントラクト種目」をそれぞれ取り入れてもいいかもしれませんね。
<POFトレーニングの順序>
POFトレーニングではトレーニングを行なう順序があります。
それは
<ミッドレンジ種目> ⇒ <ストレッチ種目> ⇒ <コントラクト種目>
の順番です!
この順序で行なうのには理由があります。
ミッドレンジ種目は高重量を扱いたいので、筋肉の疲労がより少なくて体力的にもメンタル的にも一番集中ができる最初にもってきます。
反対にコントラクト種目はある程度疲労していても重量を少なくしてトレーニングをすることや、仕上げとしてパンプアップすることが目的になりますので、
順番としては最後に持ってくることが望ましいです。
<POFトレーニング種目の効果と取り入れ方>
◆高重量のトレーニングでの目的
高重量でのトレーニングはなぜ行なうのか。これは筋力アップのためになります。
こういう高重量・低回数のトレーニングは「神経系のトレーニング」ともいわれます。
筋力(重いものを持ちあげる力)は基本的には筋肉の大きさに比例しますが、人の脳によってその力はセーブされています。
そのため、イメージをするとしたら、仮に100kgを上げれる筋力を持っていても、その力の50%をセーブされていると50kgしか持ち上げられません。
そのパーセンテージを引き上げていく効果が狙えるのが高重量のトレーニングです。
よって筋肉をつけるというよりは、筋肉の使える能力を高くするような効果が大きいです。
この能力が伸びることで筋肉量が同じでもより重い重量で筋肉に負荷がかけられるようになります。
◆筋肉を損傷させることで身体に起こること
筋肉にダメージを与えることで分泌される、「IGF-1(インスリン様成長因子)」というホルモンがあります。
このIGF-1の分泌によって筋肉の成長へとつながります。
そしてその分泌に効果的なのが物理的な負荷で筋肉にダメージを与えるストレッチ種目になります。
◆パンプアップさせることの意味
パンプアップすることで筋肉に膨れ上がり、太くなるのでなんとなく筋肉がつくような感じがしてしまうかもしれませんが、「パンプアップ=筋肉が大きくなる」ということではありません。
しかし身体への影響として、「筋肉が成長しやすい環境」にすることができます。
パンプアップすることで対象の部位の血流がよくなります。そのため、栄養のまわりもよくなりますので、そういった効果を期待できます!
<ストレスの種類>
筋力トレーニングは「身体へストレスを与える行為」であり、筋肉の成長は「ストレスに適応するための応答反応」です。
「ストレスに対応できる身体にするために身体を強くする」というのが筋肉がついていく仕組みになります。
そしてそのストレスには2つの種類があります。
筋肉の成長のためにはどちらが優秀とかではなく、「どちらも必要」になります。
筋肉がつく=ストレスへの適応であるため、同じ負荷がかかり続けることで、適応しきってしまうと身体の変化が頭打ちになってしまいます。
◆物理的ストレス
これは比較的重い重量でのトレーニングで与えられるストレスです。
重い重量によって「直接的」に筋肉に負荷をかけています。
POFトレーニングでは「ミッドレンジ種目」「ストレッチ種目」によってかけられます。
◆化学的ストレス
低重量で多い回数で行なうようなトレーニングによる代謝物によってかかる身体へのストレスです。
こういったストレスを与えるときはある程度軽い重量で回数が多い「ねちっこく効かせる」ようなトレーニングになります。
それに合わせて1セットあたりの筋肉の緊張時間が長くなります。
それによって筋肉内の環境が悪化し、ストレスとなって身体へ負荷をかけます。
POFトレーニングでは「コントラクト種目」によってストレスをかけられます。
上腕二頭筋と上腕三頭筋のPOFトレーニング
ではここからは、トレーニングの内容に入ってますが、
恒例の機能解剖学のおさらいからいきます!
◆上腕二頭筋
上腕二頭筋は腕でも肩の方では2つの「頭」に分かれていますが、肘の肘の方では一つにまとまっています。
それぞれの頭の名称は「長頭」「短頭」というものになります。
「長頭」は上腕前面の外側に位置し、「短頭」は上腕前面は内側に位置しています。
◇上腕二頭筋の起始・停止
起始・停止とは筋肉のついている端っこ同士の場所のことで、
この起始と停止の距離が近づく状態が筋肉が縮んでいる(収縮)状態、
反対に遠く放されている状態が伸びている(伸展)状態です。
<起始>
長頭:肩甲骨関節上結節
短頭:烏口突起
<停止>
橈骨(とうこつ)、上腕二頭筋膜
長頭だけ肩の関節をまたいで、肩甲骨についています。
橈骨・・・前腕(肘と手首の間)の骨で、前腕部には親指側と小指側の2本の骨がありますが、親指側の骨
◇上腕二頭筋の機能
機能とは、その筋肉がどんな動きをするための役割をもっているかです。
・肘関節の屈曲
力こぶを出すときのような肘を曲げる動きです。この動きをすると筋肉がギュっと硬くなって力が入った状態になります。
この状態は上腕二頭筋が使われて筋肉が収縮している状態になっているからです。
・肩関節の屈曲
肩関節を屈曲するというのは腕をバンザイするときのように、前に腕を挙げていく動作になります。
上腕二頭筋の長頭が肩関節をまたいで肩甲骨へついているので、肩の関節の動きのときも働くようになっています。
・前腕の回外
回外(かいがい)とは言葉のように外へ回転する動きです。
今回で言うと回転するのは前腕の骨になります。
前ならえのように腕を前に伸ばしてみてください。今、親指が上側にありますよね。
そのまま手のひらが天井に向けてください。すると親指は今度、外に向きましたね。
この動きが「前腕の回外」です。この動きも力こぶを出す動きをしてみたときに、自然とその方向に少し腕をひねってませんか?
前ならえの状態から手のひらを下にする(回内)状態でやることは、まずないと思います。
ドライバーでネジをしめたり、ドアノブを回したりするときにもこういった動きが入ることがあります。
◇上腕二頭筋のPOF種目
ストレッチ種目・・・インクラインダンベルアームカール
コントラクト種目・・・ケーブルアームカール、コンセントレーションカール
バーベルアームカールやダンベルアームカールは腕、ダンベルが腕から遠くなる、肘が90度近い角度のところで負荷がかかります。
インクラインダンベルカールは肘が身体より後ろの位置でストレッチポジションとなり、その状態で負荷をかけるのでストレッチ種目です。
ケーブルカールは常に負荷がかかりますが、フィニッシュポジションで絞り込むことができ、負荷が抜けにくいためパンプアップもしやすいのでコントラクト種目として扱うと良いでしょう。
◆上腕三頭筋
上腕三頭筋はその名前のとおり、上腕位にある筋肉で三つの「頭」があります。
これは筋肉が三つあってその総称というわけではなく、ひとつの筋肉が三つに枝分かれしている状態です。
そしてそれぞれを「長頭」「外側頭」「内側頭」というものになります。
上腕二頭筋の起始・停止
<起始>
長頭:肩甲骨関節下結節
外側頭:上腕骨頭骨神経溝上外側
内側頭:上腕骨頭骨神経溝上内側
<停止>
尺骨肘頭
あまりイメージがつかないと思いますが、
起始部を見ると長頭だけ方の関節をまたいで肩甲骨にまで及びますが、外側頭、内側頭は上腕骨に付着しています。
もう少し簡単にいうと、長頭は二の腕でも内側よりで肩に近い部分。外側頭は外側、内側頭は肘に近い部分の内側に位置します。
上腕三頭筋の機能
・肘関節の伸展
これは簡単な言葉でいうと肘を伸ばすことです。
上腕三頭筋は上腕二頭筋(ちからこぶ)と対になる筋肉です。
そのためその反対になる作用を持っています。
・肩関節の内転
肩関節の内転は動きのイメージがつけにくいですが、
腕を身体の中心線にむけて近づける動きです。ゴルフのスイングをするときに後ろの腕が前に行くときのような動きです。
(実際の動きは、ほかの動きとの複合になります)
上腕三頭筋の長頭が肩関節をまたいでいるため、肘だけではなく肩の動きにも作用します。
・前腕の伸展
肩の動きではもうひとつ作用します。
腕を後ろに引く動きで、前ならえの動きと反対の動作になります。
肩の動きに関しては他の筋肉も関与しますが、肘を伸ばす動きに関しては
上腕三頭筋の役割になっています。
◇上腕三頭筋のPOF種目
ストレッチ種目・・・フレンチプレス、ライイングトライセプスエクステンション
コントラクト種目・・・プレスダウン、トライセプスキックバック
ナローグリップベンチプレスは、ベンチプレスの手幅を肩幅程度かそれより少し狭くした手幅で持って行なう種目です。
ベンチプレスと一緒で、動作の中間位置で負荷がかかるため、ミッドレンジ種目になります。
上腕三頭筋のトレーニングの中でも特に高重量でのトレーニングが可能です。
フレンチプレスやライイングトライセプスエクステンションは肘を曲げてストレッチがかかった状態の位置でも最も負荷がかかります。
きつくなるとつい、動作が小さくなりストレッチがしっかりとかからないとこまでしか行かなくなってしまいがちなので、しっかりと深く肘を曲げることを意識しましょう。
プレスダウンやトライセプスキックバックは肘を伸ばしたときに上腕三頭筋が強く収縮します。
反対に言えばしっかりと肘を伸ばさないといけないため、あまり重量が重いとしっかりと収縮させきることができずに、コントラクト種目として負荷をかけることができませんので気を付けましょう。
最後
今回はPOFトレーニングについてでした。いろんなトレーニング方法がありますが、このトレーニング方法が正解というわけでもありません。
いくつかあるうちのひとつだと思って試してみて、自分にしっくりくるとか、様子を見てみてこれを始めてから変化を感じるとか思ったら続けてみると良いでしょう。
トレーニング初心者の方は高重量でのトレーニングは極力避けて、説明した回数より少しプラスでてきるくらいの重量に設定してもよいでしょう。
とくに筋肉を伸ばしながら行なうストレッチ種目はダメージがあるため、気を付けましょう。重さに負けて勢いよくウエイトをおろしてしまうと、筋肉や関節を痛めてしまうことがありますので注意してくださいね!
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